F3T、落下強度試験の結果
とうとう挙行してしまいました。F3T落下強度試験です。チタニウム外装の強度については皆様も興味のあるところでしょう。今回は特別に、ロッククライミングという素晴らしい試験条件にてテストを行ってみました。(^-^;
落下地点は、富山県の剱岳、小窓尾根の標高2400m、通称「マッチ箱」付近です。これはカメラを落とす直前に撮った、現場近辺の様子です。写っているのはいつもザイルを組んでくれる相方です。
撮影のためカメラをザックから取り出してくれるよう、ザイルパートナーに頼んだのですが、相方の手から滑り落ちたF3Tは、哀れ急傾斜の岩盤を「ガン、ドシャ、ガリガリ」とイイ音を立てながら墜落し、見えなくなりました。
普通、ここであきらめる物ですが、一応さがしてみようということで、登攀具を利用して斜面にぶら下がり探してみると、10m程下の草が生えた小さなテラスにカメラが引っかかっておりました。ラッキー!
当然レンズは割れ、フランジバックは狂い…などと想像がアタマを駆けめぐります。ところが拾い上げてみると意外に綺麗。
一見何ともない感じに見えます。。でも良く見ると、「ペンタがひしゃげている???」
あわててファインダーを覗きます。プリズムは割れていません。ピントも出ます。
みごとにひしゃげたペンタカバー 。でも内部のプリズムに損傷は無い。
一部が凹むだけでなく、全体にひしゃげているのが衝撃の大きさを物語る。
続いて下部の損傷状況です。
パトローネ室下部の、底蓋に大きいダメージがあります。ダイキャストも逝った?。
同損傷部のアップです。なんとチタニウム製底蓋が、割れてしまっています。しかしダイキャストは問題なく、裏蓋も開閉可能でした。
グリップ下部です。底蓋の銀色に光っている部分は塗装が剥げただけではなく、チタンが削り取られています。岩って硬いんですね。
装着していたAi 28mmF2.8Sです。フィルター枠下部が擦れ、全体に変形してフィルタ取り外しが出来ません。
さて、回収したカメラはすぐにフィルムを巻き戻し、今まで撮った写真を救済します。その状態で全速シャッターチェック。問題ないようです。レンズを着脱してみると、これも特に違和感有りません。ピントリングはスムースで、ガタが出ている様子は有りません。そこで、そのままフィルムを入れて登攀写真を続けて撮りました。
10mもガラガラ落ちたカメラの画像とは思えませんね。流石ニコンといったところでしょうか。
さて、家に帰ってから早速静岡のニコンSSに持参します。「え?10m以上落ちたんですか?」と技術の方が驚いています。チェックの結果、全く機能は正常で、フランジバック、ピントもok。うーん凄い。歪んだペンタカバーと底蓋を、もとどおりチタンで交換してくれることになりました。代金は工賃込みで約20000円だそうです。まだチタン補修部品の在庫は大丈夫だそうですよ。
昔の神話的なエピソードで、ニコンFはクレバスに落としても動いたとか、墜落した飛行機から回収しても問題なかったとかいう話を良く聞きます。私自身は、それらをあくまで物語として考えていました。カメラは落とせば壊れる物です。ところが今回、普通なら確実に駄目になる落とし方で、外装以外は壊れなかった事実を見て、さすがに感心せざるを得ませんでした。ラッキーな面ももちろんあったと思いますが、それを差し引いてもニコンのタフさは本物のようです。
チタン製外装のカメラは、衝撃を与えると外装が無事でも、内部が壊れると言われますが、F3Tの場合は外装がうまく衝撃を吸収したようです。恐らくノーマルF3の真鍮製外装では、ペンタカバーがプリズムと干渉するほど凹んだでしょうし、底蓋の激しい損傷で裏蓋が開かない事態になったはずです。
(カメラの写真は全てNikon F80 + Ai Micro-Nikkor 55mmF2.8S)
by やまねさん@F3振興会