アクリル板の切削

安価な卓上CNCルータは金属を削るのには不向きなので(不可能ではないが)、主な対象は木材やプラスティック、PCBとなる。アクリル板を切り出すにはレーザカッターがよく用いられるが、CNCはそれに比べ、彫刻(貫通させずに表面に彫り込みを入れる)が可能であるという利点がある。しかし切削時の障害となるのが刃先の過熱によりアクリルが溶ける現象である。

上のプレートはアクリル板に文字を彫り、塗装して仕上げたものである。この切削には彫刻用のVカッターを用いた。Vカッターは他の刃物に比べて過熱が起こりにくいようで、細部の加工もでき、彫刻には最適だが、平面的に掘り下げたり、アクリルを切り出すのには向いていない。切断面が斜めになってしまうという問題もある。そこでスクエアエンドミルで切削することになるが、そうすると往々にして過熱でアクリルが溶けて、エンドミルにアクリルが「ダマ」になってくっついたり、切削対象が熱で歪んだりする。

歯数が少ないエンドミルにするとか、切削の速度を遅くするなどの手もあるようだが、それでもなかなか解決しない上、どんどんと加工時間が伸びる。そこで、水で濡らしながら切削する方法を試してみた。といっても、霧吹きでアクリル板を濡らすだけである。切削前にアクリル板をたっぷりと濡らしておき、また、加工中も適宜、霧吹きで十分に湿らせる。トップの写真はそうやって切削している時の写真であるが、熱で溶けるトラブルを回避できるほかに、切削粉の飛散がかなり抑えられるというメリットもあった。切削粉は水を含んだシャーベット状になるので、ある程度切削が進むと、水を保持するための「土手」としても働いてくれる。

その方法で切削し切り出したアクリル板の例である。2mmのアクリル板の周囲を切削で薄くし、さらにその周囲を切り抜いた。使用したのは直径4mmのスクエアエンドミル(歯数2)である。平坦な部分もかなり高品質に切削できている。

このアクリル板は、ウォールナット無垢材から削り出した電卓外装のディスプレイ部分の窓である。この電卓の作成過程はこちらで紹介している。