小型・軽量 35mm カメラ購入ガイド

デジタルカメラ全盛の今、多くのショットを短時間にこなす撮影では銀塩の出る幕はなかろう。またデジタルカメラのようにすぐに写真が見られる方法が出現し、日に日に銀塩写真産業が衰退する今、DPE店の利便性のために中判カメラを避ける理由はない。重量はともかく画質を優先したいときには中判を用いるべきである。・・そう考えるとやはり 35mm カメラの利点は、(1)中判カメラやデジタル一眼レフでは得られない小ささ、(2)デジタルカメラとは異なる写真の風合い、そして(3)大口径レンズと絞りの設定による絵作りの自由度、が兼ね備えられている点に尽きるだろう。

ここでカメラの小ささについて考えるとき、35mm カメラにおける主要な2つのカメラタイプ、距離計連動型カメラと一眼レフカメラのどちらを選ぶのかという問題がまず生じる。一眼レフカメラはプリズムやミラーボックスを持つ構造上、小型化には限界があるため、ここでは距離計連動型カメラについて見ていくこととしたい。

距離計連動型カメラは、さらに大きく2種類に分けられる。1つはライカに代表されるようなレンズが交換できる高級なタイプで、もう1つはレンズが固定されている代わりに小さいカメラだ。レンズ交換型の距離計連動カメラには極めて高品質で高性能なものが多く、距離合わせの精度も高いことから、大口径レンズや広角・望遠レンズを使用した撮影など、それはそれで利用する価値があるものだが、大きさの観点では一眼レフに対する利点は小さい。持ち運びの容易さを考えると、レンズが引っ込んで小さくなる 35mm カメラに目が向く。ここではそのようなカメラを紹介する。

大きさを比較する。左から順に、コンタックスTニコンミニレチナIIa, コンタックスTvs、レチナIIIc, ニッカIII, ヴィテッサアルコ35オートマットDニコンS3

各タイプの特徴

ここで紹介するカメラは、上の写真のように大きく分けて3種類となる。 それでは順に、それぞれのタイプについて詳しく見ていこう。

レンズシャッター式折り畳みカメラ

上の写真では、コンタックスTレチナIIa、レチナIIIcヴィテッサアルコ35オートマットDアルコ35オートマットDが該当する。ほかに折りたたみ式ではないが、距離計を備えた軽量カメラとしてオリンパスXAが挙げられる。


コダック レチナIIa


オリンパスXAコンタックスT


フォクトレンダー ヴィテッサと、コンタックスT、Tvs


アルコ35オートマットD

レンズ交換
レンズの部分にシャッターが組み込まれているカメラである。ものによってはレンズ交換ができるものもあるが、ほとんどのものではレンズが固定されていて交換できない。今回紹介する5機種の中では、レチナ IIIc が前玉を交換することで 35mm と 80mm に変更することが出来るが、距離計が連動しないため使い勝手は良いとは言えない。

シャッター形式と露出計、重さ
1950年代のレチナやヴィテッサ、アルコは蛇腹を用いており、シャッターはシンクロコンパーか、それに近い形式の「機械式レンズシャッター」を搭載している。これはメカ部の外径がかなり大きいため、レンズが沈む部分を大きくあける必要があり、どうしても小型化には限界がある。中ではレチナ IIa が最も小さい。アルコ、レチナ IIIc, ヴィテッサでは、縦横比の違いがあるが、全体としては大きさと重量に大差はない。

コンタックスTは電子式シャッターを用いているために沈み込むレンズの部分が圧倒的に小さく、また豊富な機能(自動露出やセルフタイマーなど)は電子回路技術のために高度に集積化されているため、全体も非常に小さくなっている。オリンパスXAも絞り優先自動露出で、レンズ設計に工夫をこらすことで、レンズ固定式ながら薄型化を実現している。他に露出計が備わるのはレチナ IIIc であるが、この露出計はシャッター速度と絞りに連動しない。ヴィテッサにもほぼ同じ大きさで露出計が内蔵されたモデルがある。

重量も、オリンパスXAの225gやコンタックスTの 270g が圧倒的に軽く、次に IIa の 530g. 他の3機種は 650g 前後で大差はない。

使い勝手
ピント合わせは、レチナとコンタックスTはレンズの部分で行う形式であるが、コンタックスは操作部が小さくやや操作しづらい。そのかわりレチナは無限遠に合わせなければ畳むことが出来ない(コンタックスTはいつでも畳むことが出来る)。アルコは左手側のノブで、またヴィテッサは右手側のノブでピント合わせを行うが、沈胴式カメラは一般に出来るだけレンズの部分に手を触れたくないので、この種の方式は安心して扱うことが出来るという利点がある。

巻き上げは、レチナ IIa とアルコがトップレバーであるため最も使いやすい。コンタックスは背面にレバーがあり、引き出しにくいが、巻き上げ角は小さく扱いやすい。ヴィテッサのプランジャーも意外と扱いやすく、ホールドしたまま巻き上げられるので具合がよいが、慣れが必要である。反対に扱いづらいのはレチナ IIIc だ。どうしてもホールドが不安定になる。オリンパスXAはレバーでなく、ボディの一部にギザギザしたノブが露出している形式だが、巻き上げフィーリングは「写ルンです」のようなレンズ付きカメラに似てあまり重くなく、問題はない。

レンズ
1950年代のレチナやヴィテッサのレンズはどれもF2クラス(アルコは F2.4)と明るく、5〜6枚構成(ガウス型)となっていて性能も高い。どれも 50mm レンズだが、この手のカメラは一般に寄りに弱い(最短撮影距離が長い)ため、広角レンズよりも汎用性がある。また、オートアップという接写アクセサリを用いることで近接撮影が可能になる機種もある。なおアルコはなんと本体のみで 35cm まで距離計が連動するというものだが、視差や覗き方による誤差の問題があるので、一眼レフのようにピントを精密に合わせるのは難しい。1980年ごろの機種であるコンタックスTは 38mm F2.8、オリンパスXAも35mm F2.8と広角寄りで1段ほど暗いが、距離計を用いずに目測で使えるシーンがより広い。

類似機種
レチナやヴィテッサのライバル機種として、ツアイスのコンテッサ、アグファのカラート36などが挙げられる。デザインや距離計の形式、たたみ方などに違いがあるが、共通点として、後期のモデルになると露出計がついているものが多い。ただし正確な値を示さなかったり、劣化していたりすることがあるので、あまり大きな期待はしないほうがよい(個人的にはないほうがよいと思う)。さらに時代が下ると折り畳めない、固定鏡筒のモデルが増えてくる。ヴィトマチック2やシグネット35などの海外モデルのほか、キヤノネットやミノルタのハイマチックシリーズなど、国産モデルにも使い勝手・写りに定評のあるモデルが多く現れるが、大きさの点では次第に不利になってくる。

また距離計がないものにまで範囲を広げると、ローライ35シリーズやミノックス35なども面白いが、目測ではボケを活かした絵作りは難しいことが多い。国産ではオリンパスXAシリーズの人気が高いが、この中では初代のXAだけが距離計を備えており、他は目測式である。

フォーカルプレーンシャッター式距離計連動カメラ

上の写真では、ニッカIIIとニコンS3が該当する。もちろん代表的な機種はライカであり、 ライカと互換性のあるマウントを備えたカメラも多く存在する。


距離計連動式ニコン(S3、SP、S2)


ミノルタCLEとライカM6


ニッカIII + Nikkor-Q.C 5cm F3.5 沈胴

レンズ交換
多くの高級機はレンズ交換に対応している。ライカはLマウントと呼ばれるネジ式のマウントをまず採用し、これはニッカなど、いわゆる「ライカコピー機」と言われる各国の類似機種にも搭載され互換性がある。ライカは次に、1954年発売のM3に始まるM型ライカに移行した。これに搭載されたMマウントはレンズ交換が迅速で、現在もM型ライカは生産が続けられているため、最新鋭のレンズも入手できる(極めて高価であるが)。M型ライカには、近年にわたりいくつか互換性のあるカメラが存在する(後述)。

もう1つのマウント形式としては、ニコンとコンタックスが採用したマウントが有名である。ただしニコンとコンタックスは、見た目や寸法はほぼ同じでありながら異なる基準に基づいており、厳密には互換性はない。こちらも広角から望遠まで多くのレンズが供給されたが、1960年代前半には生産を終えているために、M型ライカほどの豊富なバリエーションは存在しない。例えば現役期のレンズにマルチコーティングされたものは存在しない。ただし、ニコンが2000年から3回に分けて復刻したニコンS3やSPに組み合わせられていたレンズ(50mmF1.4, 35mm F1.8)のほか、コシナがフォクトレンダーブランドで発売した一連のレンズなどが存在する。

形式、露出計、重さ
Lマウントを装備した「バルナック」型のカメラは小型化を強く意識して設計されており、このページがテーマとする「小型・軽量」という意味で優れたカメラが多い。上の写真でも分かるように、レンズ固定型のカメラに比べても大きいというほどのことはなく、また、背の低さは随一である。ライカコピー機のうち、キヤノンやニッカは独自の改良を重ねたため、後期には露出計を装備しているものや、距離計の形式を大きく変えたものも存在するが、そのぶん肥大化しており、M型ライカやニコンと変わらない大きさ・重さになってしまっているものが多い。レンズシャッター機同様、この時期の露出計は信頼出来ないものが多く、おすすめできない。

距離計連動ニコンの各機種は、時代を経てもほぼ同じ大きさ・重さ(ボディのみ600g程度)であり、コンタックスもさほど小型軽量でない。またレンズ部分の突出をなくすためには沈胴タイプのレンズが欲しいところだが、これらのカメラに適合する沈胴レンズは初期のものに限られ、極めて高価である上にコーティング等の仕様が低く、性能が良いとは限らない。

M型ライカもニコンやコンタックスと似たような重さ・重量であるが、互換機には小型軽量なものが存在する。特にミノルタCLEは小型軽量(本体375g)であり、自動露出も備えるなど素晴らしいカメラであり、この機種を専門に取り扱う修理業者も存在することから、小型軽量なカメラを探す際には、比較検討の対象に入れて良いと思う。

使い勝手
M型ライカとニコンはプロの酷使に耐えるよう極めて頑丈に、また素早い操作が出来るよう設計されており、使い勝手は良好である。距離計も見やすく極めて高精度で、広角レンズや標準レンズであれば、一眼レフよりも容易に高精度なピント合わせが出来る。ミノルタCLEはそれよりは小ぶりにできているが、自動露出を備えていることもあって使いやすいカメラである。ただしマニュアル露出では露出計が動作しないことには注意を要する。

バルナック型ライカは、上記のカメラよりも使いづらい部分があり、いくつかの「儀式」とも呼ぶべき注意点がある。特にフィルムの装填がやりづらいという意見が多く見られる(底からフィルムを差し込むときに、きちんとレールにフィルムが収まらないことがある)。またシャッターダイヤルがカメラの上部(高速用)と前部(低速用)の2箇所に分かれているが、実際にはスローシャッターを使う頻度は少ないため、気にするほどではない。ニコンもS2までは2段式のシャッターダイヤルだが、一箇所にまとまっておりやや使いやすくなっている。

バルナック型では、距離計とファインダーが分かれている点がほかのカメラとは大きく異なる点である。距離計の精度とファインダの覗きやすさを両立させるという点では優れているが、やはり速写性の観点では使い勝手が劣ることは否めない。小型化の代償と見て判断すべきであろう。バルナック型ライカとコンタックス、初期のニコン(Sまで)はノブ式の巻き上げになるが、急いで連写することもない現代では大きな問題ではない。

レンズ
レンズは、いずれも様々な焦点距離やタイプのものを選ぶことが出来る。特に広角レンズが一眼レフよりも小型軽量であり人気がある。ただし最短撮影距離は距離計により決まってしまうので、広角にすると倍率が下がってしまう(小さなものを撮影できない)点には注意すべきである。

Lマウントのレンズのうち、標準レンズのエルマータイプには沈胴タイプが多く揃っており、これをバルナック型やCLEと組わせると持ち運びしやすいカメラが構成できる。上の写真では、エルマータイプと似た設計だが、ニコン製のLマウントレンズ、Nikkor-Q.C 5cm F3.5 がニッカに装着されている(エルマーのほうが沈めた時の薄さは薄くなる)。

類似機種
バルナック型の、「当時の」互換機としては国産としてはキヤノンやニッカ、海外ではカードンやリードなどが存在するが、海外のモデルや、国産でも上記以外はレアで高価なものが多い。よって本家ライカか、ニッカ・キヤノンから選ぶとよい(ニッカ等でも、品質はそう劣るものではない)。ニッカにはニッコールレンズが付いたものも多いが、前記の沈胴式のニッコールは極めて珍しいので入手は難しく、ライカのエルマーを探すほうが早いだろう。

M型ライカでは、上に挙げたミノルタCLEが、小型軽量であることや、信頼性から最も推薦できる機種である。この前身であるライツミノルタCL(ライカCL)は露出計の素子がシャッターの手前に出てくる関係で沈胴レンズとの相性が悪い。他にもコニカヘキサーRFや、コシナのベッサシリーズ(ただし一部はLマウント)・ツアイスイコン(コンタックスではなく、これもコシナ製のMマウントカメラ)も存在する。ベッサR2やツアイス・イコンはライカに比べて軽量だが、大きさの点では大きなアドバンテージはない。

AFコンパクトカメラ

上の写真では、ニコンミニとコンタックスTvsが該当する。挙げきれないほどの多くの機種が存在するが、一般ユーザによるフィルム消費が衰退した現在でも認知されているものは限られる。


ニコンミニ(AF600QD)とニコンS2


ニコン35Ti

レンズ交換
殆どの機種ではレンズ交換は出来ない。コンタックスGシリーズは一眼レフでないAFカメラでありながらレンズ交換が出来る珍しい機種だが、大きさの点は大きなアドバンテージがない。そのかわりズームレンズを備えた機種が多い。ここには挙げていないが、デジタルカメラ出現前の、1980-1990年代に一般的に利用されてきた35mmコンパクトカメラの多くにはズームレンズが備わっている。ただし単焦点レンズを備えたものに比べ、画質で劣ったり、望遠側が極端に暗いものが多い。ここに挙げたコンタックスTvsは2倍ズームと控えめであるが、画質にはよく配慮されたレンズが搭載されている。

形式、露出計、重さ
大きさ・重さは様々であるが、1990年ごろに小型軽量化競争があり、結果として、手動のカメラよりも小型軽量なカメラが出現した。ニコンミニ(AF600QD)はわずか155gで、厚みもわずか32mmとなり、デビュー時は最小・最軽量だった。コンタックスT(270g)やオリンパスXA(225g)に比べてもかなり軽量であるが、ここまで来るとどちらも十分であり、差を感じる程ではない。さらにフラッシュも内蔵されている。

小型軽量で安価なAFコンパクトカメラは自動化も極端に進められており、絞り値を設定する余地がない。ニコンミニのような機種では焦点距離が短いこともあって、被写界深度の浅さを活かした絵作りは難しい。そのため、絞り値が設定できる(絞り優先AEが利用できる)AFコンパクトカメラも発売されている。上記コンタックスTの後継機種であるコンタックスT2に端を発した「高級コンパクトカメラ」のジャンルが1990年ごろに発生し、多くの機種が作られた。チタンを外装に用いた機種が多い。若干大きく重くなってはいるが、多くの機種では単焦点レンズを備えており、レンズが沈胴するようになっていることから依然として小型軽量であるといえる。細かなものにピントを合わせる必要がなければ、十分、様々な絵作りを楽しめるカメラである。

使い勝手
AFコンパクトカメラでは、とにかく何も考えなくてもシャッターボタンを押すだけで撮影ができ、巻き上げさえ必要がない。ただし電池の確保が必要であり、最近のデジタルカメラのほとんどが充電式となった影響で、適合するリチウム電池は「すぐにどこでも買える」という状況ではなくなりつつある。

このタイプのカメラで最も問題となるのは、AFが合わない被写体があること、またそれ以上に問題であるのは、そのことが撮影者にとってわからないことである。特に花や木々のような細かいもの、細いものは不得意なことがある。アクティブ測距方式(赤外線を投光し、その反射角度から距離を求めるもの)に比べ、パッシブ方式(二箇所から撮影した画像を比べて距離を推定する方式)のほうが細かいものや遠距離の被写体を得意とし、高級コンパクトカメラにはパッシブ方式を備えるものや、アクティブ・パッシブを併用するものもある。また一部の機種ではボディやファインダ内に求めた距離が表示されるものがあり、それを確認することで、大きくずれているケース(中抜けと呼ばれ、二人の人物の真ん中から背景が見えている時に、背景にピントが合ってしまうような現象)が起こったことを知ることが出来るものもある。

レンズ
高級コンパクトカメラに搭載されているレンズには、最新の設計製造技術やハイレベルなコーティングが投入されており、極めて高性能なレンズが多い。うまくピントが合いさえすれば、非常に良好な画像を得ることが出来る。

「高級」と呼ばれないタイプのカメラでも、単焦点レンズを備えたものは高画質なものが多く見られる。ニコンミニもその写りの良さで人気を博したモデルであるし、他にも京セラのTプルーフや富士フィルムのティアラなどレンズの良さを前面に打ち出したモデルも存在する。当時はズームレンズを備えたタイプに比べ安価なモデルであったことは皮肉である。ただし絞りの形状が丸くないものが多く、ぼかした時のぼけの品質は劣ることが多い(一方、高級コンパクトAFカメラでは、円形に近い形状を保つ虹彩絞りが搭載されているものが多い)。

類似機種
高級コンパクトAFカメラは、そのパイオニアであるコンタックスT2に続くものとして、単焦点レンズを備えたT3、ズームレンズを備えたTvsシリーズ(3種類)が存在する。Tvsシリーズの写りも侮れない。また他のメーカも対抗機種を販売しており、ニコン35Ti/28Ti, ミノルタTC-1、リコーのGRシリーズ、ライカミニルックスシリーズなどがある。コニカヘキサーも定評のあるカメラだが、大柄で、かつ沈胴しない。

単焦点コンパクトカメラで定評があるのは、ニコンミニやTプルーフの他、コニカのビッグミニシリーズ、富士フイルムのティアラシリーズなどがある。同シリーズでも後期にはズーム化されたものが多く見られるが、単焦点モデルに人気があるように思われる。定評のモデルの他にも写りが良いものもあるはずで、現在このジャンルは極めて安価になっているため、それを探すのも面白いかもしれない。

おすすめの機種

以上のように、いろいろなタイプがあり、なかなか選びがたい(極論すると、1つですべてを満たすものはない)が、個人的なおすすめの機種は以下の通りである。
レチナIIaまたはIIc/IIIC
蛇腹の付いた、折りたたみ型ではもっともお勧めできる機種である。シャッターが自動でセットされないもの(コンテッサ)、巻上げ方法が特殊なもの(ヴィテッサ)などと比較して操作性がよく、かつ、小型軽量である。ファインダの見やすさは IIIC 大窓と呼ばれるモデルが良いが、少し大きいことと、巻き上げレバーが底にあるため、IIaと比べて購入すると良い。クセノン・ヘリゴンレンズともにとても良く写り、距離計の精度も十分なので、大口径のボケを活かした絵作りには向いている。畳むとレンズに蓋がされるのも良い。

バルナック型またはミノルタCLE+沈胴レンズ
若干高価な組み合わせとなるが、本格的なカメラが欲しい、というタイプにお勧めできる。バルナック型は迅速な撮影操作に向いていないが、その儀式を楽しむ心の余裕を楽しむべきであるし、なにより作りが良いので、所有する喜びは大きい。CLEは自動露出を備えることから、迅速な撮影に向く。沈胴レンズの他、標準のロッコール 40mm F2 も小型軽量であるためお勧めできる。距離計・ファインダの見やすさの点でも、ここに挙げたおすすめ機種の中では群を抜いて一番であろう。

コンタックスTまたはオリンパスXA
距離計によりピントを合わせて撮影したいが、とにかく小さなカメラが欲しい、という場合にお勧めできる。小型化のため操作部材が極端に小さく、操作しづらいことは否めないが、どちらも自動露出を備えていることもあり、撮影操作に特段の不都合はない。XAとTを比べた時の最大の違いは、Tには虹彩絞りが備わっておりボケの形状が丸く保たれる点であろう。写りはどちらも十分であるが、開放絞りで周辺まで均一な描写を保つか、というと、どちらも欠点なしとはいえない。XAは露出計のCdSセンサが劣化しているものが多くなっている。

ティアラ、ニコンミニ、コンタックスT3
AFカメラからどれを選ぶのかというと、完全に好みの世界になってしまう。その中で、敢えて上の3機種を選んだ。ニコンミニと、(初代の、ズームでない)ティアラはどちらも優れたレンズを備えており、28mmの広角であることもあってピントの精度が気になることがほとんどない。コンタックスT3は高級コンパクトAFカメラでは最後のほうに出現した機種であり、極めて小さい上に優れたレンズが搭載されている。個人的にはニコン35Tiも持っており、そのレンズの写りは大変気に入っているが、少し大柄だし、一般には、少しバランスを欠いたカメラであると認識されているようである。しかし、近年、高級コンパクトAFカメラは極端に高騰しており、修理が難しくなっていることもあっておすすめしづらくなってきた。

キヤノネットQL17 G-III, ミノルタハイマチックE等
沈胴や折りたたみが出来ないためにこのページの趣旨からは少し外れるが、安価で写りが良く、使いやすいカメラである。機種によっては電池の入手性がよくないものがある。各メーカのラインナップのうち高級なタイプのものには距離計が備わり、また多くの機種では自動露出であるが、露出計の見やすさやマニュアル露出の可否などに違いがあるので好みに合わせて選ぶと良い。焦点距離が40-45mmと短めで使いやすく、F1.7近辺の明るいレンズが付いているものが多いのがこのタイプの美点である。